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キャンドルドリーム ソラ編 第2章 5

キャンドルドリーム  ソラ編
 2章 : クーリンは唄って笑って忙しい [5]


「聖火教は……自然と共に生きる部族に多く信仰されている"星海信仰"を邪教と決めているでやんす。それを信じる者達を全て蛮族と称して、打ち滅ぼすべしと」

 創志の目が見開かれる。

 めちゃくちゃな内容だ。
 それを信じている奴らにも驚くが、……一番驚いたのはそんな風潮が世界にあると分かっていて、それでもなお分かり合おうとするシャイナの意思だ。自分が考えていたよりも何倍も重い意味をあの言葉は持っていた。
 それに気づき、創志はギリッと歯を噛み締める。好きなことをやれと言ってはみたが……自分が促したその決断はシャイナにどれほどの苦難を強いるのだろう。
「……ふ、はは」
 創志は自然と笑みを零した。シャイナの瞳を思い出して、口から零れる声を抑えることができなかった。


(いいだろうシャイナ。俺は君の描いた絵を……責任を取って見届けてやる)


 創志の中にまた炎が燈る。
 それはもはや消えない火となり、創志の中で燃え続けるだろう。そしてそれと同時に、創志の頭は計算する。シャイナの理想に立ちはだかる万難を打ち崩す方法を。

 確かラグナやシャイナは「クリューレの名を出すな」と言っていた。つまり彼らは創志に蛮族の仲間というレッテルを貼らせないためにああ言ったのだ。自分の部族は間違ってはいない、そんな主張すら押しのけて彼らは創志のために忠告した。
 また、それほどまでに……差別は根強いということだ。
「現ホルトレア王は聖火教を強く信じているのか?」
「……そうでやんすね。有名な話でやんすよ」
「だから、今回の闘いが起きたわけか」
 クーリンは表情を暗くして、周りに嘆き悲しむ人々がいる手前、耳打ちに近い状態で創志に呟く。
「……戦った部族はクリューレ。戦争になりそうな蛮族王の国とは関係がない静かな部族でやんす。蛮族王の暴威が囁かれ、蛮族打ち滅ぼすべしの気運が高まる前までは、この国でもクリューレと物々交換などをしている商人もいたようでやんすが……」
 クーリンはそこで残念そうに首を横に振った。
「今ではクリューレも他の静かな部族も皆、敵扱いでやんす」
 創志は興味深そうにクーリンを見下ろす。
「あんたはそうではなさそうだな? 珍しいんだろう、そういう考え方は」
「そうでやんすね。私の考え方は珍しいと思うでやんすよ。ただ、吟遊詩人なるもの、公平な目で物事を見るべきと思っているでやんすから」
 クーリンはそう呟き、少し呪いの言葉が収まってきたことを感じ取り、また楽器を抱えて詩を歌おうとした。さきほどから彼が歌っていた詩は戦争は悲しいものと遠まわしに伝えるような、戦場に行った兵隊たちの詩だった。
「って、ああ……」
 また弦が外れて飛んでいってしまう。これではクーリンは詩を歌うどころではない。創志はその様子に苦笑して――――、ゆっくりと胸に手を当てて口を開いた。


 ??♪


 それは透き通るような澄んだ声だった。
 それでいて広場中に響き渡り、まだ残っていた呪いの言葉を打ち消すほどに力があった。

 クーリンは弦を直す手すら止めて、創志の唄を聴いていた。
 創志にしてみればたまたまテレビで流れていた歌手のヒットソングを歌ったに過ぎないのだが、それはこちらの世界には聞きなれない独特な曲調であったため、一気に広場中の人間の気を引いた。
「……げ」
 クーリンに乗っかり、少しでも蛮族への偏見を薄れさせるためにと思って歌い出した創志だったが、まさかここまでの効果があるとは思っていなかったために、途中で歌を区切って絶句する創志。目立つことが嫌いな創志にとってはその視線の数は拷問に近かった。
 このような状況になったのも、一重に創志の万能さ故なのだが。創志は自分では気づいていなかったが、普通に歌声も完璧だった。
「ソラさん……、それ、詩でやんすか?」
「いや……詩というか、唄というか。俺の住んでいた場所に伝わっていたのはこういう唄だった……そんな気がする」
 慌てて記憶喪失である設定を付け足す創志。普段動じない創志があからさまに動揺していた。
 その時、一番近くにいた老人が創志に声をかける。
「おい、兄ちゃん。珍しい詩だな……、もう少し聞かせちゃあくれないかね」
 その声に誘われるように回りからいくつもの声がかけられる。
「なんだか、元気が出る詩だったよ。聞いたことがない変わった詩だったし、歌ってくれないかい?」
「楽器もなしで歌うなんて珍しい詩人だなぁ」
 矢継ぎ早にかけられる言葉に創志はパニック寸前になりながら、引きつった顔で数歩後ずさった。しかし好奇の視線は外れることは無く、クーリンに説得されるがままに数曲歌わされる羽目になる創志だった。

 蛮族への反感は消えることは無かったが、創志の唄で広場の民衆は嘆きを止め、涙を拭き、やがて一人一人と去っていく。

 その様子を創志は必死に歌いながら眺めていた。
 戦術上での人の心は読みやすい。しかしそれ以外の心情は、人付き合いを避ける創志にはまるでわからない手合いだ。相手が本音に対してストレートであるか、押さえ込んでしまうか、その程度しかわからない。今まで創志はそこだけで人の好き嫌いを判断していたため、それ以上は必要がなかった。

 そんな彼は、自分の歌で落ち着きを取り戻していく……自分が馬鹿と罵った民衆を興味深そうに見つめていた。


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