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キャンドルドリーム ソラ編 第3章 8

キャンドルドリーム  ソラ編
 3章 : リガイは牢屋でチェスをする [8]


 リガイは驚きを隠せない様子でその結果を見つめていた。

 彼の視界内で二人は愉快に笑い合っている。まるでそれは十年来の旧友のようであった。二人はこの時ここに打てばよかったのではないか、などと一戦を振り返りながら話に花を咲かせていた。
「そ、その……リバルト様」
 リガイが恐る恐る口を挟むと、リバルトは目を丸くして苦笑する。
「あ、ああ。これは時間を使いすぎた。ありがとう、リガイ。本題が残っていたね」
 リバルトは微笑みながら創志を見つめる。しかしその瞳に真剣さが宿っているのを見つけ、創志は姿勢を正す。
 その直後に、リバルトは信じられないことを言った。
「君の自由を約束した上で、こちらからお願いしたい」
 リバルト第一王子が深く頭を下げた。

「このリバルト・ホルトレアの右腕となってくれないか」

 創志は頭を下げた王子を見据えて、口を開いた。
「頭を上げてくれ。そういうのは苦手だ」
「そうか。では……」
 リバルトは頭をあげ、創志を見つめる。
「聞きたいことがある。どうして俺なんだ? 有能な部下ならいっぱいいるんじゃないのか?」
「確かに私には優秀な家臣たちがいる。しかし私の夢をかなえるためには何かが足りない、そう常に思っていた」
「夢、ね」
「そう、夢だ」
 リバルトは真っ直ぐ創志を見つめ、拳を握り締めた。
「私は……」



「私は、クリューレや他の蛮族と蔑まれている者たちと手を取り合いたい」



 創志は目を見開いた。それは驚いたからではなかったが。
「何故?」
「私が行方不明になっていたことはリガイから聞いたな?」
「ああ」
 リバルトは一度頷いてから、目を閉じて言葉を紡いだ。
「私は五年前、刺客に襲われ瀕死の傷を負った。その時……助けてくれたのがクリューレの民だったのだ」
 創志は確信を持ち、その名を告げる。
「シャイナの、両親だな」
 その名が出たことに驚いた様子でリバルトは目を見開く。その無言の追求に創志は静かに答える。
「俺は鉄砲水に巻き込まれたところをクリューレに助けられた。その時助けてくれたのがシャイナだ」
 リバルトはごくりと唾を飲み込み、懐かしいものを思い出すかのように微笑んだ。
 なるほど、これはもはや運命か。
「彼女は、元気だったか」
「元気すぎるぐらいだ」
「そうか。それはよかった」
 リバルトは唇を噛み締めて顔を俯ける。そしてテーブルの上で組んだ手を強く握り締める。
「シャイナの両親が殺されたのは、私が弱かったからだ。私の声は、祖父や弟には届かなかった」
「…………そして、今回もか」
「ああ。ルバルが指示したクリューレ侵攻を……私は止めることができなかった。私の力だけでは足りなかった」
 クリューレの危機をまるで自分のことのように悲痛に話すリバルトに創志の表情が険しくなる。
「もはや軍は私の言うことは聞かない。一時は私の夢も潰えたかと……そう思っていた」
 リバルトはそこで燃える瞳を創志に向ける。
「今なら確信できる。クリューレを守ってくれたのは君だな、ソラ」
「手を貸しただけだ」
 リバルトはそこでテーブルに頭をこすり付けるほど腰を折る。
「感謝する!! 私は……本当に……っ!!」
 そのままの状態で、リバルトは続ける。
「私は……、今回のことで遅すぎたが決意した。決意したんだ……!」
 リバルトは顔をあげ、創志を見て叫んだ。


「どうやってでも、何をしてでも、私は私の夢を……私の声をこの国に響かせてやる!」


 創志の瞳が狂気に染まる。
 彼の蝋燭にさらに火がつく。
 彼にはリバルトの言った言葉がどのような意味で、どれほどまでの覚悟かを窺い知れた。聖火教を国として否定するということがどういうことなのか、わからないリバルトでも創志でもない。
「いいぞ、リバルト。最高だ、それでいい、それでこそ王だ」
 創志が大笑いをしながら仰け反り、椅子から転げ落ちる。
 それでも創志は笑い続けた。
 そして狂気の表情でリバルトを見上げる。リバルトも決意の表情でその狂気を受け止めた。
「王は国のため。民は国がよくなればいい。……笑わせる、笑わせてくれる! そこに王など必要はない! 土地さえあれば王はいなくても国がなくても民は生きる!」
 創志はガバッと立ち上がってリバルトの前まで歩み寄る。
「ルバルは野心はあったが、結局のところ奴は玉座を磨くことしか興味がない。そんな凡人に用はない」
 リバルトはその言葉を黙って受け止める。
「国は集合体。王は民を率いるもの。だからこその王だ! その点では……現王は大したものだといえる」
 創志はそこでリバルトの顔を指差し、言い放った。

「王になれ、リバルト。現王から玉座ではなく民を奪え」

 リバルトは臆せずただ一度はっきりと頷いた。
「当たり前だ。それは私の夢の第一歩に過ぎない」
「よく言った」
 創志はその場で床へ座り込み、丁寧にリバルトに傅いた。その様子にリガイはおろかリバルトも驚いて創志を見つめる。
「その炎があなた様の心に燈り続ける限り……」
 創志は深々と頭を下げ、宣言した。


「全身全霊をかけて、あなたの夢を叶えるとここに誓おう」


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