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キャンドルドリーム ソラ編 第3章 4

キャンドルドリーム  ソラ編
 3章 : リガイは牢屋でチェスをする [4]



 あっさりと魔法を見せ付けた看守に創志はため息をついた。
 どうやら今まで自分が考えていたことは全て計算しなおしらしい。そんな反則技があるとは夢にも思わなかった。

「へ? もしかして魔法のことまで忘れてたのかい?」
「ああ……驚きだ」
「なんか、おたく面白いな」
「そう評されるのは非常に遺憾だ」
 創志は正直に落胆を口にした。
 この世界では魔法は少数の人間にしか扱えないものらしい。それは生まれつきあるかないかの差であり、資質がない者には一切扱えない。
 また、もう一つ聞いた情報ではホルトレア軍はいくつかの魔法士軍団を擁しているらしい。
「魔法のことはまた詳しく教えてくれ」
「ほいほい」
 看守はそう言って、ようやくルールを把握した創志に向かって盤を置いた。そして駒を配る。
「初めてなら、どの陣形がいいとか知らないよなぁ。セオリーとかいる?」
 駒の配置すら自分で決める軍戯。確かに初心者にとって難しいのは当たり前である。
「いや、ある程度読めた」
「は?」
 看守が驚いて声をあげる。そんな看守を見て、創志はカードを選び終えて微笑んだ。そのカードを右手に持ち団扇のように広げて持つ。

「……これはただのゲームなのか?」

 その問いに看守はびくりと震えた。その動揺を創志は逃さない。
「は、はは……強気だねぇおたく。初めてなのに、賭けたいわけ?」
「そうだな。俺が勝ったら一つずつ俺の質問に答える。……というのはどうだろう?」
 看守は目を細めた(ように感じた)。
「構わないけど、俺が勝った時は?」
「晩飯あげるよ」
「アハハハ、まずそうだけど、まあそれで手を打とうかぁ」
 そう言って看守は駒を並べ始めた。



「リバルト王子について知っていることを聞かせてくれ」

 看守は何故自分が負けたのかも分からない様子で混乱していた。
 そんな看守に向かって創志は淡々と話を進める。
「知っていることを言え」
「……あぅ。いや、知っていることって、どんなことだよ?」
「なんでもいい」
「じゃ、じゃあ……」
 看守はまだ混乱しながらも首を捻って話し始めた。
「リバルト第一王子は幼少の頃から聡明な御方で、現王が復帰なさる前……つまりぃ、リバルト様のお父上が健在の時は確実に王位を継ぐ御方を噂されていたよ」
「だが、今は違うようだが?」
「蛮族国が隣に出来て国内の緊張が高まったことや……、リバルト様のお父上の病死、様々な理由で復帰した現王は、国内の意思を統一する必要性があると判断されて……」
 看守は途中からひどく落ち着いて、とても丁寧な口調で話し出した。そのことには創志は気づかない振りをした。
「聖火教だな?」
「ああ。聖火教を信仰しない国は列強には加えられない。だから他国への友好の意思表示も含め聖火教を広めることで、国内の意思統一を狙った。だが、それにリバルト様は否定的だった」
 創志は目を細める。
「否定的、ね」
「それが現王には不都合だった。逆にルバル様は現王の意思を継ぐ形になる」
 創志は口元に笑みを浮かべた。
 ようするにこの国は聖火教を信じたわけじゃない。政治的に利用しただけに過ぎない。そんな十年も満たない俄かなもの……ひっくり返せばいいだけだ。
 創志の頭が様々な計算を行っていく。彼の頭はどんな非道すらも許可して全ての策を検索をしていた。
「……ならば、ルバルにつくのも悪くないか」
 創志はそう呟いた。気に入らないが野心はある男だ。この国が発展するならば方法は問うまい。聖火教を広めるよりも富国に効果がある方法を提示してやればなんとかなるかもしれない。ルバルを王にし、傀儡にすればいいだけのこと。
 そんなあくどいことを考えていた創志を看守は険しい表情で見つめている。

「だが、最大の理由は別にあるんだ」

 創志はその言葉に計算を止めて顔を上げる。看守は真っ直ぐ創志を見つめていた。創志がその表情に一瞬だけ驚き、すぐに不敵に微笑んだ。
「聞こう」
 看守はゆっくりと頷いた。
「リバルト王子は五年前……一度行方不明になられている」
 創志が目を見開く。
「リバルト王子は隣国への視察の帰りに、クリューレという蛮族の集落の近くを馬車で通過の際、何者かの襲撃を受けて失踪なされた」
「なんだと?」
「捜索の末、一ヵ月後にクリューレの蛮族にリバルト様が捕えられていたのを見つけた。すぐにリバルト様は救出されたのだが……」
 創志の頭の中で事実が繋がっていく。
「助け出されたリバルト王子は洗脳された、もしくは偽者かもしれないという噂が広まったわけだな?」
 看守が頷く。
「蛮族に呪いをかけられたなど様々。元々聖火教を否定的だったこともあった所為か、その噂で軍内ではリバルト王子を無視してルバル様に仕えるものも現れ出し、国は大きく二つに割れている」
「なるほど……」
 創志はパズルのピースが組みあがっていく様子に微笑む。
 どうやら、自分の身の振り方を考えるためには……もう一人話してみないといけない人物が出来たようだ。
 創志は口元に笑みを浮かべたまま看守に問いかける。
「そういえば先ほど軍戯を打っている際に言っていたな。リバルト王子は国内で有数の軍戯の打ち手だと」
「え? あ、ああ……そうだが。……んんっ、そうだけど」
 慌てて口調を戻そうとする看守に創志は人差し指を突きつける。

「下手な芝居はやめろ」

 絶句した様子で看守の体が固まる。
「な、なんのことかなぁ?」
「いちいち下品な振りをするな」
 創志が看守を睨む。
「おまえは魔法を使える存在が希少と言ったな?」
「あ!」
 看守は"しまった"という顔をした。
「フン。魔法を使える人物が看守の役など任せられるわけないだろう? なかなか高貴な人間のようだが?」
 看守はため息をついて、両手を挙げた。
「はぁ……鋭い。降参です」
 先ほどよりもさらに丁寧な口調で言ってから、看守は前髪を一気に掻きあげて、ポケットから取り出したピンで後ろに留める。すると横髪はぼさぼさのままだったが、気品ある表情があらわになる。その両の瞳は先ほどの下品さはどこへやら、透き通った瞳で創志を感服した様子で見つめていた。
「失礼しました。試すような真似をしたことは謝ります」
「構わないさ」
 創志はそこで吐き捨てるように言った。
「最初から本当に記憶喪失かどうか試している節があったからな。嘘をついていることはすぐにわかった」
「ああ……本当に鋭い」
 目の前の男は礼儀正しく座って、創志を真っ直ぐ見つめた。
「私はリガイといいます」
「ソラだ。まだ名前は言ってなかったか?」
「いえ、すでに聞き及んでいます」
 リガイの言葉に創志は目を細める。
「この度は、ソラさんにお話したいことがありまして……」
 リガイがその続きを言おうとした時、創志がそれを手で制する。
「……?」
 創志はそこで不敵に笑って軍戯の盤を人差し指の爪で叩いた。

「聞きたいことは俺が自分の力で聞く。――――さぁ、駒を置きなおせ」

 リガイは目を丸くしてから、一つ咳払いをする。
「なるほど、凄い人です。……ならば一局打つ前にこちらから一つお願いが」
「言ってみろ」
 リガイはそこで微笑んだ。
「打つ前に、服装を整えさせてくれませんか? 慣れぬ格好では感覚が狂うので」
 ぼろぼろの兵士の服を摘みながら言うリガイを見て、創志はおかしそうに笑った。
「ははは、いいだろう! 次は本気で来てくれよ」
 リガイは頭を下げながら立ち上がり、顔を上げて不敵に笑った。
「是非」


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