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キャンドルドリーム ソラ編 第3章 1

キャンドルドリーム  ソラ編
 3章 : リガイは牢屋でチェスをする [1]


 辺りは薄暗い。
 周囲の空気は重く澱み、息をすることすら億劫になる。四方を取り巻く壁は全てひんやりとした石が積み重なってできており、その部屋の不気味さを際立たせている。部屋の広さはせいぜい縦横三メートル程度。その石室の中央にて、創志は静かに目を閉じて胡坐をかいて座っていた。
「…………」
 創志は微動だにせず、周囲と世界を断絶しているかのように自分の世界に入っていた。それは彼の趣味であった蝋燭の火を眺め続ける時の集中力に酷似している。
 創志は今まで得た情報を整理し、様々なことを整理していた。その期間、すでにこの牢屋に入れられて七日である。看守は最初は驚いて恐々眺めていたが、すでに創志が牢屋にいないかのような……まるで空気を相手にしている様子で任務中にも関わらず転寝をしていた。

 ホルトレア首都。

 その中央にそびえる国と同じ名の城、ホルトレア王城の地下に創志は捕えられていた。本人に捕えられているという自覚があるかどうかは別として。すでに七日が経ったが創志はただただ目を閉じて考え事をしていた。


 そして、さらに九日後のことである。
 創志が伸びた髪を少々鬱陶しく思い始めた頃――――、地下牢に不釣合いな優雅な足音が響いた。
「……ん? ――――は、はぁ!?」
 看守であった兵士は転寝していた状態から飛び起き、急いで敬礼をとった。
 創志はその驚いた声でゆっくりと目を開き、瞳を動かして鉄格子越しに看守を見据える。しかし創志の位置からは角度的に現れた相手の様子は見えなかった。
「その様子では、罪人は大人しくしているようだな」
「はっ! ……も、申し訳ありません」
「謝罪など問うてはいない。罪人の様子を聞いている」
 苛立った声に看守は慌てて再度敬礼をし直して、はきはきした声で答える。
「罪人は日がな一日、微動だにせず瞑想にふけっております。食事はとりますが、それ以外は本当に空気のようでして……」
 相手は看守を手でどくように指示し、ようやく創志から姿が見える位置に体を動かした。
 そこに現れた者は鎧は纏ってはいなかったが、猛々しい具足を身に着けた華々しい男だった。しかし輪郭に一般的な軍人のごつごつさは感じない。創志は相手が自信に満ち溢れた表情で目の前に立ったのを訝しげに眉をひそめた。
「はじめまして、と言っておこうか」
「……はじめまして」
 創志はその男を見上げる。じっくり見れば腰に提げた剣は実用というには程遠い装飾剣のようだった。

「我が名はルバル。このホルトレアの第二王子である」

「……!」
 あまりの大物の登場に創志が目を見開く。
「我が軍団にケンカを売るとは面白い男よ、名を何と言う」
「ソラ」
「ソラか。……では聞こう、ソラよ」
 ルバルは腕組みをして、創志を威圧する。
「おまえは間者の疑いをかけられている。……申し開きはあるか?」
「別に」
 さらりと答えた創志にルバルは目を丸くする。
「なに?」
「結局のところ、第二王子様が決めるのだろう? なら、何を言おうが同じこと」
 不敵に答える創志。
 そんな創志を見下ろし、可笑しそうに笑うルバル。
「ハハハハッ! 面白い男だ! やはり思った通りの男よ!」
「……用件を聞きたい」
 創志が冷めた声で問うのもお構い無しに、ルバルは手を広げて口を開いた。

「おまえの力を借りたい」


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