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キャンドルドリーム ソラ編 第2章 11

キャンドルドリーム  ソラ編
 2章 : クーリンは唄って笑って忙しい [11]



 創志は手枷足枷をはめられ、馬車に乗せられていた。

 その馬車内には二人の兵士が剣を携えたまま座っている。
 あの広場の一件で捕えられた創志は現在首都へ護送されている途中だ。あの一件以来あの町の駐留軍隊長であったゾルバが廃人になってしまったため、創志の処遇は軍本部に委ねるということらしい。あの程度で廃人になるようで、どうやって隊長などを務められていたのか……すらも創志は感じない。もはやあんな男のことなど創志の頭の中から綺麗さっぱり消し去っていた。

 創志はちらりと自分を監視している二人の兵士を順番に見る。
 その顔には見覚えがあった。広場で創志に切っ先を突きつけ、逆に関節を外された兵士。そして女の子を捕えることを躊躇った兵士の二人だった。その二人の兵士は時折、何かを話しかけようと口を開きかけるのだが、すぐに思いとどまって顔を俯けることをもう何度も繰り返していた。

 もうお分かりだろうが、その仕草に創志は相当イライラしていた。

「……言いたいことがあるなら言えばいいだろう」
 その言葉に二人の兵士は飛び跳ねるように体を伸ばし、情けなさそうに微笑んだ。そしてアイコンタクトを取り合ってから、女の子を捕えることを躊躇した兵士の方が先に口を開いた。
「これは個人的な意見だが、……俺達は感謝している」
 創志は訝しげに目を細める。
「他意はない。軍では上の命令は絶対だ。だが、あのような幼子を捕えることはしたくなかった」
 もう一方の兵士も黙って頷く。
「あの子は無事だ。そこに、感謝している」
 創志は大きく息を吐いてから兵士を横目で見た。
「……捕えなかったのはおまえだろう。感謝される理由がない」
 兵士は驚いた様子で……また情けなさそうに笑った。
「だが、あの詩人が割って入ってくれなければ捕えるしかなかっただろう」
「なら、どうしても感謝したいのならクーリンにするんだな」
「ははっ、確かに正論だ」
 兵士二人はようやくやわらかな笑みを浮かべて、体を弛緩させた。
「あの吟遊詩人もまた無事だ。だがすまない、行方はわからない」
「構わないさ。元々、行く道も違う」
「…………」
 不思議そうに兵士の一人が口を開く。
「君は詩人ではないのか?」
「違う。俺はただの旅人さ。クーリンとは一週間ほど前に会って一緒に旅をしただけだ」
「そうか……。なかなか、唄はうまいと聞いていたがね」
 創志はそこで目を見開き、恥ずかしそうに俯く。
 やはり歌うことはもうしないと決めた。

 兵士二人は道中、非常に好意的であった。あの広場での立ち回りから創志を純粋に尊敬している風でもあり、様々な話を聞かせてくれた。
「ホルトレアは建国時は現在の十分の一ほどだった。だがそれを周りの部族を併合、侵略を行って現在の規模になった」

 普通戦争を繰り返す国は勝ち始めた時は非常に豊かだ。相手の国から全てを奪えるから。
 しかし、奪い尽くせば残るのはさらに広がった領土と敵だ。戦いを続けながら広くなった領土を豊かにするためにはさらに国力を高めるしかないのだが、戦争を繰り返しすぎるとその国力をさらなる戦争による略奪によって補おうとする国が出て来る。そうなると……国は腐敗する。
「だが王はとても聡明な御方、荒れた地を順次耕すことを命じ、戦争を継続しても、敵国の民からの略奪を禁じても、国が疲弊するようなことは一度も無かった」
 兵士はいつも自らの国のことを話す時は誇らしげだった。そこには純粋な愛国心があった。創志はクリューレと敵対するこの国の実態は、実は非常によい国だということがわかってきていた。シャイナの願いを邪魔するものは聖火教を信ずる今の王。さらに言えば、それによって出来た風潮に過ぎない。
「だが、今この国は迷走している……」
 兵士の二人は肩を落として続けた。
「第一王子であらせられるリバルト様、第二王子であられるルバル様。御二方が犬猿の仲……国も軍も二つに分かれてしまった」
「だから、あんな横暴をする上司も現れるってことか」
「そこを言われると痛いがな……」
 兵士は創志の歯に衣着せぬ言い分に苦笑する。
「リバルト様はお優しい御方。しかしそれ故に反戦思考であると噂されている」
「その逆、ルバル様は非常に好戦的なお方。国の更なる拡大を望まれているらしい」
 その言い方に創志は目を細める。当たり前のことだが、一介の兵士が王族と触れ合う機会などない。全てが噂による意見となる。本当にそれが正しいかは、やはり自分の目で見なければわからない。
 そう思ったからこそ、創志は王都を目指したのだ。
「王は……異例となるがルバル様を次期王にすることも考えておられるらしい」
「そこまでリバルト第一王子は頼りないと思われているのか?」
 その問いに兵士たちは肩をすくめる。
「さぁな……、俺達にはわからんよ」
「次期王が聡明な方であり、また国を一つにまとめてくれることを祈るばかりだ」
「ああ、国が一枚岩にならねば……蛮族国には勝てない」
 兵士はそこで苦笑する。
「はは、本当はこんな話を罪人にしてはいけないんだがな」
「空気と思ってくれればいいさ」
 創志がさらりと答えると、二人の兵士は微笑んだ。
「面白いことを言う。やはり……大物だ」
 兵士の二人は頷き合い……、しかしそこで肩を落とした。
「だがすまない……君の刑は重くなるだろう」
「死罪はさすがにないだろうが……」
 創志はわかりきっていたという様子で動じることは無かった。
「逃げたくなれば逃げるさ」

 創志のその言葉に二人の兵士は目を丸くして、やはり大物だと頷き合うのだった。


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